2020年6月にオープンした昆虫食レストラン「アントシカダ」、記憶する限り昆虫は一度もいただいたことが無かったでので非常に楽しみにお伺いしました。
「ようこそ〜スナック」
コオロギの出汁から作ったチップス。発酵させたマッシュルーム、チポトレ(唐辛子の燻製)などの香辛料。醤油っぽい味もしましたが、出汁の味でしょうか(少し後引く味)。えびせんっぽくて美味。コオロギは雑食で何でも食べるので、餌による味の調整がしやすいというのは面白い。
「山伏〜飛竜頭、蕗、山椒、コオロギ餡」
料理はこういう感じか。黒っぽいコロロギ餡は、コオロギを乾燥させる時に出る出汁を使ったもの。野生の山椒の力強い味わいがアクセントとなっており美味。28歳でチームの中で最年長という白鳥シェフはフレンチ「レフェルヴェソンス」やデンマークのイノベーティブなレストランで働かれていたそう。
「コオロギ醤油のあそび方〜蛍烏賊、コオロギ醤油」
愛知県の「桝塚味噌(野田味噌商店)」と共同開発したコオロギ醤油を使った蛍烏賊の沖漬け。タンパク質の豊富さとか大豆の成分と似ているのだろうか。醤油だけ味見させていただきましたが、甘味が強く、濃厚。コオロギ3連発でしたが、雑味(コオロギらしさとも言えるのか?食べ慣れてないことによるものか?)を感じ、繊細さは無いので、上品な料理には向かなさそうに感じます。
「タガメジン」
ドリンクはアラカルトメニューはなくペアリング。発酵に詳しい山口さんがドリンクを担当しているのですが、カクテル、日本酒、酎ハイなどが出てきてユニークで面白い。先ほどの蛍烏賊が強烈なので、岐阜県郡上八幡の「アルケミエ辰巳蒸留所」と共同開発したタガメジンで味を切るという考えには納得。
「南瓜、蜂の子、小麦、ハーブ」
南瓜のスープと千葉県鴨川市「苗目」の香り高いハーブ。スープの中に小麦。
「蜂の子の赤ワインビネガー煮」
途中でこれを使って味変。コガタスズメバチの蜂の子と前蛹(子と蛹の間)。煮てあるので、素材本来の味(甘いのだそう)よりもブドウの味が強い。前蛹はコクのあるレーズンみたい。スープとのマッチングは疑問有り。
「セミの気持ち」
セミが食べられるのかと思ったら、樹液を吸うセミの気持ちになってみてということでした。。。中に2種類のジュースが入っています。これはしょうもな。
「どじょう、辛子白味噌マヨ、野蒜」
虫を全く使わない料理も。江戸で食用として親しまれてきたどじょうは、安来節で有名な島根県安来市の「やすぎどじょうセンター」のもの。7〜8匹をそのまま春巻きに仕上げています。美味しいに決まっている。
「野生〜猪、イナゴ醬、黒にんにく、ボタンボウフウの蕾」
メインは普通に獣肉でした。猪は愛媛のもので、店で1週間ほど熟成。ソースに自家製のイナゴ醬を使用。後でルタガバ(スウェーデンカブ)の蒸し焼き。カブと芋の要素を併せ持ち、力強い風味で猪と良く合います。
「これまでとこれから〜コオロギ」
噂のコオロギラーメン、ランチで提供するものよりコオロギ純度が高くコオロギ100%。「フタボシコオロギ」と「ヨーロッパイエコオロギ」の2種の国産コオロギ出汁、コオロギ醤油を使ったタレ、コオロギ油、粉末コオロギを練り込んだコオロギ練り込み麺を合わせています。トッピングは白黒色が違う2種のコオロギから選べたので、コオロギらしい味わいという「フタボシコオロギ」を乗せていただきました。やはり甲殻類の出汁に似た味わいで、重層感はありませんがクリア。スープも全て飲み干せます。完成度も高くて旨い。
「啓蟄〜タイワンタガメ、蕗の薹、どぶろく」
タイワンタガメはタイなどではメジャーな食材だそう。乾燥したタガメを割って繁殖期のオスのフェロモンを匂わせていただきましたが、フルーティーで素敵な香りで驚きました。タガメ♀でなくヒト♂♀誘われちゃいます。蕗の薹のメレンゲにマスカルポーネクリーム、どぶろくとタガメフェロモン香るソースを合わせています。面白い。
「タルト〜蚕の糞、金柑」
お茶のような香りがする蚕の糞(蚕沙)をクリームに使ったエッグタルト。金柑の風味が消えてしまっている気がしましたが、熱々で美味しくいただきました。
昆虫でぐいぐい攻めてくるのかと思っていたのですが、調味料やアクセントで使用し、味はともかく料理としてきっちり仕上げているのは好感触。ボリュームが少な過ぎるのと、お店の雰囲気が、劇場型のコの字型カウンター、クラブっぽいBGMと広尾のレストラン「81」の縮小版のような感じで、あまり好きではありません(信者みたいな客がいたのも鬱々)。世界のイノベーティブレストランは映像などを駆使したファッション性重視の体験型にシフトしているというのを聞いたことがありますが、こちらのレンストランも然り。
スタッフの方が、昆虫の養殖はまだ初期段階なので、今後凄い発展する可能性があるとおっしゃっていましたが、「味」のみを考えるとどうでしょう。今日の料理にしても、他の素材の代用品という域を出ていない気がしましたが、今後の展開に期待。ただ取り組み自体は非常に素晴らしく、競合もありませんので、ミシュランガイド掲載、アジア(世界)のベストレストランに選ばれる可能性も十分あると思います。ごちそうさまでした。
コメント