国立劇場で令和3年6月歌舞伎鑑賞教室を拝見しました。まずは中村種之助君の「解説 歌舞伎のみかた」から。セリの上下高による格好良いオープニングから『伽羅先代萩 床下の場』へ。荒獅子男之助役はラジオ『問わず語りの神田伯山』でもお馴染みの市川荒五郎さんか!その後、マスク売りなども登場しましたが、基本的にとても真面目な解説。20分の休憩を挟んで『人情噺文七元結』へ。
配役
左官長兵衛:尾上松緑(音羽屋)
女房お兼:中村扇雀(成駒家)
和泉屋手代文七:坂東亀蔵(音羽屋)
鳶頭伊兵衛:中村種之助(播磨屋)
家主甚八:尾上松太郎(音羽屋)
娘お久:坂東新悟(大和屋)
和泉屋清兵衛:市川團蔵(三河屋)
角海老女房お駒:中村魁春(加賀屋)
五代目柳家小さん師匠の落語から入っているので、長兵衛の性格が優しすぎて違和感がありましたが、三遊亭圓朝の当時の口述筆記を読むと、そちらに近いのか。以前シネマ歌舞伎で拝見した中村勘三郎さんの文七は落語に近かった記憶も。通りで笑いの要素が、笑いを増やすために改作を重ねた現在の落語より少ない訳だ。長兵衛が聞いている印半纏は細川屋敷で身ぐるみ剥がされた結果、それを着させられて追い出されたもの。今回はも兼の着物を引き剥がすシーンは無し。DVっぽくて世間的に良くないから?面白いのに。「吉原角海老内証の場」も圓朝のものに近い。吉原の「角海老」は、落語だと「佐野槌」ですが、圓朝はどちらも使っていたらしい。現在の落語だと長兵衛は角海老女房お駒に、娘に礼を言えと言われ、しぶしぶ礼を言い、泣き合う状況になるのですが、歌舞伎では最初から泣きモード。にしても新悟君のお声は素敵で癒されます。和泉屋は本来べっ甲問屋の設定ですが、歌舞伎では小間物屋になっているのは元結への自然な繋がりのためか。他角樽のやり取りなど、落語の方が面白いと思うのですが、題名に「人情噺」と付いているから歌舞伎ではそちらの要素を強めに表現しているのかも。もっと笑いに振ったほうが結果泣ける気がするのですが。落語の方が圧倒的に好きだな。今日は修学旅行の中学生?高校生?が大勢見に来ていたのですが、果たして楽しめたのでしょうか?戦後に初演された六代目尾上菊五郎さんの『人情噺文七元結』も見てみたいものです。
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