令和5年5月文楽公演 第三部『夏祭浪花鑑』国立劇場

令和5年5月文楽公演 第三部『夏祭浪花鑑』国立劇場
国立劇場で令和5年5月文楽公演 第三部『夏祭浪花鑑』へ、文楽では初めて拝見するのでとても楽しみ。

配役
令和5年5月文楽公演 第三部『夏祭浪花鑑』国立劇場
まずは『住吉鳥居前の段』から。床屋の名前は碇床、釣船三婦が赤褌を脱ぐ場面は歌舞伎のオリジナルなのか。暴れる団七の又から覗く赤褌に痺れます。団七、徳兵衛の喧嘩をお梶が止める場面は意外とあっさりですが、幕切れで3人で決まる姿は惚れ惚れ!!玉助さんの遣う徳兵衛、めっちゃ格好良いのに、出番がとても少ない。。。『内本町道具屋の段』、吉田玉翔さんと仲買弥市(落語の金明竹の仲買弥市はここから来ているのか)の人形のお顔が似過ぎて笑える。悪事を働く団七の舅義平次とそれを、思わず知ってしまう団七の煩悶が最後の悲劇に繋がる。しかしこの物語、全部磯之丞(清七)の女たらしと浅慮せいなのでは。

釣船三婦内の段』、勢いのままお中と駆け落ちした磯之丞に悋気して煙草の煙を吐きかける琴浦の仕草の可愛さ健気さ。それに「据え膳とフグ汁を喰わぬは男のうちではない」と言い返す磯之丞の子供っぽさったらないですが、女性は母性を擽ぐる駄目な男に惚れるものなのか。そして徳兵衛より登場場面が多い女房お辰が格好良い!自分の顔に焼き鏝を当てるのは人形とわかっていても、いや人形が演じるからこそ痛い。舞台からはける時に扇子で右顔を隠す様子に、ほんの少しだけ女心?後悔?恥じらい?を感じます。その後、耳に掛けた数珠をぶち切る三婦、下っ端2人を一方的に張り倒す立廻りが楽しい。最後、義平次が琴裏を連れ去ったと知った時の団七の焦りと囃子の盛り上がり、次の段への期待が呼応します。『長町裏の段』、織太夫さんと勘十郎さんの団七、藤太夫さんと和夫さんの義平次、この戦いは凄過ぎて瞳孔全開、一列目中央で体感する緊迫感と迫力!!流石に歌舞伎のように本泥は使わないが、義平次の下品さと不気味さを引き立てる笛の音、団七の怒りと煩悶を盛り上げる太鼓の音、人形遣いの独断場、死にかけながら幽霊のように立ち上がる義平次の執念、生への粘着、金の亡者っぷりが本当に怖ろしく、耳や背中を切られた義平次の人形から血が流れる演出も良い。祭囃子の激しいだんじりに隠れて血の付いた体を井戸水で洗い流す団七、幕切れ、舞台から退場する時の団七の走りの速さも素晴らしく、勘十郎さんは歩いているのに、団七は全速力で走っているという不思議さ。人形が活躍する舞台は一列目が最高です(義太夫、三味線への集中がかなり疎かにはなりますが)。

後味は悪い演目ですが、胸に突然、鉛の煮え湯を浴びせられたような放心、舞台、床上にいない方も含めた一体感、熱気に完全にやられた。とても良い舞台を見せていただきました!素晴らしい!!

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