落語「さん喬十八番集成~晩秋にて~時そば/抜け雀/ちきり伊勢屋」国立演芸場

国立演芸場で柳家さん喬師匠の独演会「さん喬十八番集成~晩秋にて~」を拝見しました。最初にプログラムが配られるたのですが、演目に「ちきり伊勢屋」とだけ。古今亭志ん朝のCDで前半だけ聞いたことのある演目、後半が聞きたかったので凄く嬉しくなりました。

開口一番「金明竹」柳家小きち
「時そば」柳家さん喬
ちきり伊勢屋、長い演目なので、まさかの2時間ぶっ通しかと思ったら違った。神田の蕎麦屋で、もりそばの上に七味唐辛子を掛けて食べている格好良い人を見てから、自分もそうしているというマクラから。ど定番の演目ですが、描写が丁寧で、表情も面白い。
「抜け雀」柳家さん喬
休憩無しで次の演目へ、人形町の蕎麦屋が大繁盛している時は、小さん師匠が「人形町末廣」で「時そば」をかけた時という後マクラから、こちらも定番ですが、良い良い。正直者でちょっと抜けている宿屋相模屋主人、雀の真似が愛嬌たっぷり、絵師と主人との友情が熱くて、「抜け雀」を聞いて泣きそうになったのは初めて。

「ちきり伊勢屋」柳家さん喬
15分の仲入りを挟み「ちきり伊勢屋」、頭に情景が浮かぶ表現力が素晴らしい。ちきり伊勢屋清次郎と太鼓持ち伝八が一緒に、待乳山から眺める浅草や上野の情景も目に浮かびます。後半、待乳山の帰りに命を助けた白木屋娘おみよと清次郎の別れの場面、三味線も入り、雪が降る中、傘を差し、ゆっくりと歩く2人、自分が死ぬことを言い出せずに、清次郎を乗せた籠は行ってしまい、1人残されるおみよ。もう極上に美しい映像の世界。この辺からずっと涙目で拝聴。途中で出てくる「いろは長屋」は、場所ではなく、最底辺の長屋のことなのか。2月15日、清次郎の代わりに死んだのは白木屋の主人、基本楽しい話ではないですが最後はハッピーエンド、ちきり伊勢屋はちきり福屋と呼ばれるようになったとか。1時間10分、めちゃくちゃ難易度の高い演目ですが、優しい語り口ながらも、緊張感は十分。聞いている時も、聞いた後も、帰宅してからも、思い出しては心がじんわり温まる素晴らしい一幕。もうね、さん喬師匠、人間国宝認定でもいいと思う。爆笑の連続ではなく、きっちり聞かせる落語はずっと記憶に残る、とても良いです。

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