
国立能楽堂で「3月特別企画公演」を拝見しました。
配役

「天正狂言本」と古画による狂言『袴裂(はかまさき)野村又三郎(和泉流)』
1つの袴を2人で穿くという設定がわかりやすく見た目にも面白い。ムコにばれないように、太郎冠者と一緒に舞を舞うばかばかしさに爆笑。最後はムコにそれがバレて恥ずかしや恥ずかしやと逃げる舅が可愛い。
復曲能『武文(たけぶん)金井雄資・宝生欣哉(宝生流)』
地謡がほとんど入らず台詞で展開、言葉も非常にわかりやすい。元ネタは『太平記』にも記載がある尼崎の沼島女郎(ぬしまじょろう)の伝説。土佐に流された後醍醐天皇の一宮尊良親王を追って尼崎までやってきた一宮御息所とお付きの秦武文でしたが、だまされて海賊に連れ去られてしまうという内容。そして、松浦某は実際の存在した海の武士団(後に海賊)の松浦党のよう。
地謡は活躍せずですが、囃子方、狂言方の野村萬斎さんも大活躍。京から大物の浦への夜の道中から、最後の鳴門海峡まで20場面ほど。金井賢郎さんの御息所、ぷっくりした唇、絶妙な非対称な面「孫次郎」の効果、細っそりした撫で肩で艶かしさがとても素敵。宿に火を付ける火付けの3人はちょっと楽しそう。前場の最後の武文の自害、こんなに格好良い切腹は初めて見た。後場は後シテの武文の怨霊が凄い、能面「木汁怪士(きじるあやかし)」と波模様の袴が非常に効果的で、海中を躍動する様が容易に想像される。働(はたらき)からイロエへの緩急、松浦某が海に投げ入れた御息所の衣を手にし力は弱まるも、その後に武文が御息所を数秒見つめる視線が強過ぎて胸に刺さる。最後の力を振り絞り、松浦某を海に引きずり込む武文の御息所への思いに感動。普通の能よりわかりやすい現代的な演出ですが、無駄のない美しい所作による想像力の増幅効果もあり、素晴らしい舞台でした。
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