『スーパー歌舞伎II 新版オグリ』新橋演舞場

「面白かったですか?」と聞かれれば「面白かった」と答えますが、「もう1回見たいですか?」と聞かれれば「1回でお腹いっぱい」と答えます。平成30年1月の『世界花小栗判官』を拝見していたので、比較もできて面白かった。

配役
藤原正清後に小栗判官:市川猿之助
遊行上人:中村隼人
照手姫:坂東新悟
小栗一郎:市村竹松
小栗二郎:市川男寅
小栗三郎/山賊:市川笑也
小栗四郎:中村福之助
小栗五郎/山賊:市川猿弥
小栗六郎:中村玉太郎
鬼次/銀鬼少将/商人:市川弘太郎
金坊:市川猿
大納言の妻/閻魔夫人:市川笑三郎
横山修理太夫/長殿:市川男女蔵

高倉久麿/黒姫/女郎蒲公英:嘉島典俊
閻魔大王:浅野和之

「第一幕」は小栗党が照手姫を奪い去るところから。一郎は学者風、二郎は見た目普通ののんびり屋、三郎はクールで愛情深いが実は女子、四郎は金髪の蝦夷、五朗は照手姫に振られる猿弥さん、フォルムも可愛くて大好き、六郎はキャップをかぶった暗い過去を持つ凄腕といった感じでしょうか。衣装のどこかににサンスクリット語で名前を表す数字が記されていています。あれっ猿之助さん、ちょっと膨よかになりましたか?話はだいぶサクサク進みます。見所となる荒馬の鬼鹿毛(おにかげ)を乗りこなす場面、メタリックで足はぶらぶらだが、目も光ります。ツケ打ちが大変そうっ!世界花・・・の小さい箱に後ろ足立ちする方が緊迫感あって格好良かったような。最後はバラの園で不意打ちにあい毒矢であっけなく全員死亡。照手は豪華船SAGAMI丸で相模湾に流されます。「この世にし 楽しくあらば 来む世には 虫に鳥にも 我はなりなむ」。。。

「第二幕」は照手が流れ着いた「もろこしが浦」から、溢れる婆たちのスマホやタブレットを使った演出はもはや陳腐さを感じます。杖にいっぱいストラップを付けたメルヘンとホラーの間のカメ婆はちょっとしか出なかったですが、爪痕を残しました。嫉妬の炎は恐ろしや。照手は女郎屋「近江屋」へ100両で身売りされてしまいます。場面は地獄へ、地獄改革を考える閻魔はやや上滑り気味?六郎のエピソードも切り替えが早過ぎてやや無理を感じる。最後は本水を使った立ち回り。これは血の池地獄だったんですね。閻魔の娘の黒姫に萌え。可愛いです。立ち回りの仕方がちょっと違うと思ったら、やっぱりワンピースにも出てた俳優さんなんですね。舞台の地獄もなかなかでしたが、幕間のトイレ地獄もなかなか過酷なのに笑える。男性は余裕ですが、スゥーパーリストバンドCMエンドレス地獄が辛い。

「第三幕」はお能風の地譜から。舞台装置は完全にお能の作り物。餓鬼阿弥となって娑婆に送り返された小栗。衣装は極彩色、体が腐る病気というのはハンセン病のことでしょうか。藤沢の遊行上人は私の大好きな一遍上人を連想させ、途中で姿を変えて小栗を助ける閻魔が良い味出してます。道成寺は天台宗なので浄土宗系とは仲悪いのかしら。なんやかんやあって、熊野にたどり着き復活した小栗。待ちに待ったスペクタルな左右宙乗り、天馬が、天馬が冴えない!さっきあんだけ凄いメタル馬が出てきた後だけに、なおさら貧相では。物語に関係なく宙乗りしなくていいと思います。最後はあっとう間に国主になった小栗が照手と出会いスーパーリストバンド発動。着物の袂も発光します。皆で野暮天神な歓喜の舞を踊って終了っ???遊行上人が一遍上人と考えると「歓喜の舞」は「踊り念仏」と考えるとなんとか納得できるでしょうか。

ワンピースに続いてあまり共感できないスーパー歌舞伎II、先日シネマ歌舞伎で拝見した『ヤマトタケル』の方がよっぽど面白かった。やっぱり右團次さん、彌十郎さん、河合雪之丞さんとベテラン勢の重要さがよっく分かりました。コミカルパートが多く、物語自体が浅いし、芯となる人物が小栗と照手しかおらず、物語を支えるのには辛い。「自分だけが楽しければよいのか?」という閻魔の問いへの答えも軽過ぎる。あと小栗:中村隼人君Ver.のがお役的に合ってたかもね。

着物ベースですが、煌びやかな衣装は洒落ており、観音の化身とも思われる母性溢れ出る照手姫演じる坂東新悟のお声はとても綺麗で聞いてて耳に心地よい。小栗三郎役の市川笑也さんも凛としたお美しさもグッド。鏡を使った舞台演出も面白かった。役者の後ろ姿も見えるし3階席からでも反射で花道がよく見えて素敵でした。来年夏の『ヤマトタケル』に期待です!

コメント

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