紀尾井町小ホールで「5月国立演芸場寄席 落語協会真打昇進披露公演」を拝見しました。
前座「やかん」入船亭辰ぢろ
下げは「それから禿げた頭のことをヤカン頭と言うようになった」
「寄合酒」三遊亭伊織
コロナ禍、マックでバイトしていたマクラ。喋り方によってはもう少し面白くできただろうに。
「マキシム・ド・呑兵衛」五明樓玉の輔
足立区綾瀬の居酒屋「呑兵衛」を経営する夫婦のお婆ちゃんが娘に誘われ銀座のフレンチ「マキシム・ド・フランス」に行く流れに親しみが湧く。エントランスの花、ソムリエなどそこで得た知識をもとに呑兵衛を改革するが案の定とんでもないことに。下げは「それでチエが孫の手を貸してくれた」
「漫才」春風一風・千風
久々に拝見しましたが、相変わらずの落ち着き。
「有名人の家」三遊亭天どん
後ろ幕と同色の鶯色の着物、つい出てしまった「ほいでさー」が面白い。千葉で有名人の家を探すのが好きな人の話。橋本環奈の家、松田聖子の家などを巡ります。下げは「どうせそんなに偽物に決まってるだろ」
「新聞記事」林家正蔵
正蔵師匠の時代で終わった、当時の池袋演芸場で行われていた真打昇進試験の話が興味深い。その後は何度も聞いた、グルコサミンからの新聞記事か。
「真打昇進披露口上」
下手から玉の輔師匠、天どん師匠、わん丈さん、つる子さん、正蔵師匠。新真打が並ぶのは大初日以来。後ろ幕はわん丈さんのものに変わっていますが、歌舞伎の定式幕を意識したものだそう。毒、ぐだぐだ、真面目と個性がよく出た口上、三本締めの仕切りが初めて天どん師匠が勤めましたが、やっぱりぐだぐだになるのが楽しい。
「子ほめのイヤホンガイド」三遊亭わん丈、春風亭だいえい
口上で隣で泣きまくるつる子さん、どうやら背中にタンクを仕込んでいる疑惑があるらしいという話題から、上手から正蔵師匠、下手からつる子さんとたま平さんが乱入するという楽しい場面も。「初めての親子共演」とつぶやくわん丈さんの反射神経が凄い。続いて初めて歌舞伎座に歌舞伎を見に行ったエピソードのイヤホンガイドがとても分かりやすいというマクラを振って高座を降り、続いてだいえいさんが登場。少し会場はざわつきましたが流石はわん丈。だいえいさんが演じる「子ほめ」のガイドという設定ですが、ガイドというよりだいえいイジりな感じも。緊張したのか、普通に間違えるだいえいさんが微笑ましい。もはやコントに近い気もしますが、興味深い一席でした。
「太神楽曲芸」鏡味仙志郎・仙成
「中村仲蔵」林家つる子
正蔵師匠の家に祀られているお稲荷さまの神棚にまつわるマクラから、中村仲蔵と言葉を発した瞬間、客席から声が漏れた。いつもながら汗と唾を跳ね飛ばしながらの熱演、この熱量で走り続けて大丈夫かと心配になる。仲蔵の妻のお岸の部分がやや多め、蕎麦を1本ずつすする様など女々しい仲蔵な印象ですが、ほぼ通常通り。芝居が跳ねた後、仲蔵が隠れて、客からの評判を聞く部分はグッと来ます。個人的には現代的な擽りはもう少し少ない方が聞きやすいですが、今後が楽しみになる一席でした。新真打お二人とも鈴本演芸場、7月上席での初めてのトリが決まったそうで、おめでとうございます。
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