九月大歌舞伎 『双蝶々曲輪日記 引窓』『鷺娘』歌舞伎座


歌舞伎座再開2ヶ月目!「九月大歌舞伎」、第三部、第四部を続けて拝見しました。まずは第三部『双蝶々曲輪日記 引窓』から。

配役
濡髪長五郎:中村吉右衛門(播磨屋)
南与兵衛後に南方十次兵衛:尾上菊之助(音羽屋)
平岡丹平:中村歌昇(播磨屋)
三原伝造:中村種之助(播磨屋)
お早:中村雀右衛門(京屋)
お幸:中村東蔵(加賀屋)

吉右衛門さん、雀右衛門さん、東蔵さんのベテラン勢がめっちゃ良かった。久しぶりの生の舞台、休養もたっぷりだったためか、精力十分なのが伝わります。菊之助さんも以前よりお顔が引き締まっていてより若々しい美男子に、お役にもぴったりです。人間関係はお幸の実の息子は濡髪長五郎、再婚相手の連れ子が南与兵衛、その嫁がお早。役者とお役の実年齢が滅茶苦茶ですが、問題無し!違和感無し!これぞ歌舞伎の幻想世界です。

4人も人を殺めており、すごく強いはずなのですが、母親の前では弱いマザコン気味の長五郎。私には共感できない設定ですが、5歳で里子に出されていると思えば止む無し。吉右衛門さんの表情、意外に颯爽とした動きもお見事。「与兵衛にお渡しや〜、や〜、や〜」「落ちやんす、剃りやんす」の繰り返しなど独特の台詞回しがキマっています。それに対して菊之助さんの与兵衛は、軽快な優男の雰囲気で、コントラストが際立つ。武士と町人の変化もとても器用に演じておられました(器用過ぎる気もしますが)。異母兄弟の最後のやりとり「もう九つ」「いや明け六つ」「残る三つは」「母への進上」は心に沁みます。きっと長五郎は最後まで捕まるつもりだったのが、与兵衛との最後のやりとりで心変わりをしたのではないでしょうか。「引窓」の使い方はそれほど印象的だとは思いませんが、当時は斬新な舞台装置だったのかもしれませんし、「引窓」という語調はとてもしっくりときます(私の想像力不足かもしれません)。雀右衛門さんのお早もお馬に乗ったり、動揺し過ぎて分かりやすくぶるぶる震えたり、とってもチャーミング、「笑止」って廓言葉だったのか。おろおろするのが似合う東蔵さんのお幸も、人が良さが滲み出ており、慈愛に満ちていました。しかしやっぱり吉右衛門さんの存在感、一見不器用にも見えますが、一言一言に重量が感じられ、歌舞伎度120%!!素晴らしいです。そして登場人物が皆んな優しい演目って好きだわ。

「十月大歌舞伎」では松本白鸚さんの濡髪長五郎で『角力場』を上演するので、そちらも楽しみです。幕間が1時間45分もあるので、近くの居酒屋で一杯ひっかけた後は第四部『鷺娘』です。「映像×舞踊 特別公演」ということですが、どんなものでしょうか。

配役
鷺の精:坂東玉三郎(大和屋)

まずは『口上』から。舞台に歌舞伎座の正面を設え、金屏風、赤い毛氈の上に玉三郎さん。口上からの流れで、舞台下がどうなっているかの紹介映像、昨年八月の『新版 雪之丞変化』と同様の趣向です。阿古屋の花道からの出はちょっとサービス。本編の上演時間が短いので、この辺りまでは、まだ良かったのですが、肝心の『鷺娘』も中盤はざっくり映像のみ。シネマ歌舞伎で見たし。長唄も録音で、ちょっと残念。とても切ない詞章なのに、これでは泣けないな。玉三郎さんは大好きなのですが、様子も美しいのですが、私は玉三郎さんの芸が好き、生の芸を期待していたので、最後のカーテンコールも白けた。もう昔のようには踊れないため、『鷺娘』を全編踊ることはもう無いそうですが、それにしても違和感有ったな。そんな感じだったので熱海のMOA美術館の能楽堂で開催予定だった舞踏公演中止は本当に残念。来月の『楊貴妃』も足を運ぶかどうか、考えてしまいました。。。

第二部『色彩間苅豆』も追加でチケットを取りましたので、期待しております!

コメント

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