令和2年10月歌舞伎公演 第二部『新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎』『太刀盗人』国立劇場 大劇場

令和2年10月歌舞伎公演 第二部『新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎』『太刀盗人』
昨年の12月以来の国立劇場での歌舞伎公演。客入りは2割くらい?私は3階席でしたが、1階席はご高齢の方が多いように見受けられます。席が沢山空いているのに、自分の席におっさんが座っていてびっくりしました。「そこ自分の席です」と伝えると「あんっ、いっぱい空いてんだから別の席に座ってくれよ〜」と言われてしまいましたが、手前がちゃんと自分の席へ座れよ。若い人より年配の人の方が確実に太々しい。結局スタッフの方の救援もあり何とかなりましたが、本当に困ります。

気を取り直して、一題目は『新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ) 魚屋宗五郎』です。DVDで二世尾上松録さん、七世尾上梅幸さんの公演を拝見しており、一度体験してみたかった演目で、とても楽しみ。

配役:
魚屋宗五郎:尾上菊五郎(音羽屋)
宗五郎女房おはま:中村時蔵(萬屋)
磯部主計之介:坂東彦三郎(音羽屋)
磯部召使おなぎ:中村梅枝(萬屋)
酒屋丁稚与吉:尾上丑之助(音羽屋)
鳶吉五郎:市村橘太郎(橘屋)
岩上典蔵:片岡亀蔵(松島屋)
小奴三吉:河原崎権十郎(山崎屋)
菊茶屋女房おみつ:市村萬次郎(橘屋)
宗五郎父太兵衛:市川團蔵(三河屋)
家老浦戸十左衛門:市川左團次(高島屋)

平成29年5月歌舞伎座公演と同じ菊五郎さん宗五郎と時蔵さんおはまのコンビ。脇の役者さんも含め、もの凄い一体感と安定感。序幕「片門前魚屋宗五郎内の場」から。宗五郎の妹お蔦が、何の科もないのに殺された事実を、おなぎから聞き、金毘羅様へ誓った禁酒を破り、酒を呑みだす件が最高。女性の髻(たぶさ)を掴んで引き回すのは、屈辱的な行為なのか。まぁ呑まずにいられるかよ。三味線に合わせて酒を飲み干すのですが、緩急とリズム感が素敵。こちらも思わず体が動いてしまいます。リズムネタって昔からあるんですね。家族に止められながらも何やかんや言って、おなぎが持ってきた、おそらく一升入りの角樽を飲み干す宗五郎、そして酩酊。小奴三吉が座るとき、着物をパンパンッと足に挟む仕草は堂に入ってますね。格好良い。酔っ払って磯部邸に乗り込んだ宗五郎を追っていく、時蔵さんも素敵。動きが素早いゾ!

二幕目は「磯部邸玄関先の場」、宗五郎の「酔って言うんじゃございませんが・・・」の長台詞は聞かせます。「親父も笑や、こいつ(おはま)も笑い、わっちも笑って暮らしやした。」からの乾笑いが切ない。そして家老浦戸十左衛門役の市川左團次さんが素晴らしい。大柄で風格も十分。上手いです。家老の長台詞の間に宗五郎が寝てしまうのですが、絶妙。宗五郎が寝てしまうのも、全く自然な心地よい台詞回しでいて、観客に眠気は催さない名人芸。廻り舞台が稼働し「磯部邸庭先の場」へ。時蔵さんの膝まくらー、メッチャ寝心地良さそう!羨ましい!同じく酒乱のデコ助の殿様役は彦三郎さん、凛々しいだけに酔ったら冷酷そう。磯部が縁側に置いた見舞金を顔が見えないように、回収する宗五郎、「おはま、どうしよう?」って貰う気満々じゃねーか!酩酊時とのギャップがお見事。しかし宗五郎がついさっきの記憶を全く無くしているのも同じ酒飲みとしては、不自然な気もするが、ここでの謙虚な態度も欺くための演技だったら凄いが、そんな狡猾な性質ではなさそうです。最後はまぁ目出度しと言ってもよい終わり方。華やかさはありませんが、演劇の面白さを存分に味わえる一幕。もっとお客さん入ってもいいと思うのだけれど。なかなかどうして。

二題目は狂言『長光』を歌舞伎に取り入れた岡村柿紅作『太刀盗人(たちぬすびと)』です。

配役
すっぱの九郎兵衛:尾上松緑(音羽屋)
田舎者万兵衛:坂東亀蔵(音羽屋)
目代丁字左衛門:片岡亀蔵(松島屋)
従者藤内:尾上菊伸(音羽屋)

三枚目のお役の松緑さんは初めて見るかも。腹もクロクロ九郎兵衛、面白メイクとはいえ、心底の三枚目感は出ず、男振りは隠せない。ストーリーが単純過ぎて最初の方若干眠くなったのですが、だんだん面白くなってきた。太刀の出処、銘を問う件で「正」「宗」の漢字がわからず、超適当にごまかす九郎ちゃんに爆笑。地肌焼の様体を表現する連舞も楽しい、覗き見しながら必死こいて舞う九郎兵衛がチャーミング。最終的には刀の寸尺を答えられず盗人とばれますが、刀を奪ってとんずらしました。。。図太い。舞台では亀蔵さんが従者に長袴を踏まれ転倒しているが笑えます。誰でも笑えて楽しめる舞台なんだけど、いかんせん客入りが寂しい。密とは無縁の国立劇場です。

国立劇場の前、数ヶ月振りに店内飲食を再開した銀座6丁目、泰明通り沿いの歌舞伎好きが集まる小料理屋「しらたまや」へ。フィルムで覆われた個室、コロナ対策も万全でした。
栗ご飯
「丹澤山」の熱燗を呑みながら、南瓜の煮付、里芋の唐墨掛け、蒸し伊勢海老、豚汁などいただきました。そして今年初の栗ご飯旨っ。

そして自分が食べたいがために差し入れさせていただいた「虎ノ門 虓」のカヌレ。
カヌレ
一緒に出していただいた自家製ジンジャーウイスキーも美味。昼のアルコール度数じゃないけれど、美味しいから問題無し。久々に女将と色々お話させていただき、楽しい時間を過ごさせていただきました。フィルム越しとはいえ、実際に会って話せるって、本当に素晴らしい事です。ごちそうさまでした。

国立劇場の第一部はチケットを取っていないのですが、とても面白いそうなので、行かねば!

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