初春海老蔵歌舞伎『春調娘七種』『毛抜』新橋演舞場

初春海老蔵歌舞伎『春調娘七種』『毛抜』新橋演舞場
初の歌舞伎役者の名前がそのまま付いた歌舞伎公演「初春海老蔵歌舞伎」を拝見いたしました。まずは舞踊劇『春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)』から。

配役
曽我五郎:市川右團次(高嶋屋)
静御前:中村児太郎(成駒屋)
曽我十郎:中村壱太郎(成駒屋)

源義経の恋人静御前と曽我兄弟が一緒に登場する珍しいお話。静御前の父の仇も、曽我兄弟と同じ工藤祐経という設定のよう。ちなみに工藤祐経は舞楽の名手で、静御前が鶴岡八幡宮で舞った時に鼓を打ったそうな。

神と君との道すぐに 神と君との道すぐに 治まる国ぞ久しき

若菜摘むとて 袖引き連れて 思ふ友どち好い仲好い仲
仲の好いのを傍から見れば どれが姉やら妹やら よく似たな よく似た さってもよく似た
しゃなしゃな行けば 振りもよし 今来るよねに見せうずもの 見せうずもの
袖引きひくな若き人 あら大胆な人ぢゃえ

春は梢も一様に 梅が花咲く殿造り 目指す敵は かたきとは いいやかたへに鶯の
ほーほーほー ほうほけきゃう ほうほけきゃうと囀っても 餌ばみも知らぬくもけらけら 空うそふいて
はて 気を鎮めて打ち囃し 初若水の若菜のご祝儀 恋の仮名文いつ書き習ひ
誓文命も候べく かしくと留め袖 問うにゃ落ちいで語るに落ちる 様は茨か私ゃゆひかねて
抱いていたさよいつとても 誓文命も候べく かしくと留め袖 問うにゃ落ちいで語るに落ちる
様は茨か私ゃゆひかねて 抱いていたさよいつとても 睦まじと君は知らずや瑞籬の
久しき代々の例には 引くや 夜の鼓の拍子を揃へて 七草なづな
御形 田平子 仏の座 すずな すずしろ 芹 なづな 七種揃へて恵方へきっと直って
しったんしったん どんがらりどんがらり どんどんがらり どんがらり
唐土の鳥が 日本の土地へ 渡らぬ先に

怨敵退散 国土安泰 千秋楽々万歳万歳 今を盛りの心の花も 開くる開くる運は天
天長地久 万里が外も 打ち納めたる今日の七種

基本的に平和を祈る、美しい詞章。十郎が小鼓、五郎が大鼓、静御前が七草を手に持つ。右團次さんの五郎ははまり役、普通の曽我ものでみてみたい。しとやかな壱太郎君の十郎も良い。一人舞も美しいです。後半は扇を富士山、そして俎板、閉じた扇を擂り粉木に見立てて七草を打ち始める所作が楽しい。七草を打つが敵討ち、コロナに打ち勝つともかかっているようです。

続いて本日のメイン『歌舞伎十八番の内 毛抜』、2018年の歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」で『雷神不動北山櫻』を拝見して以来です。

配役
粂寺弾正:市川海老蔵(成田屋)
秦民部:市川男女蔵(滝野屋)
腰元巻絹:中村壱太郎(成駒屋)
秦秀太郎:中村児太郎(成駒屋)
小野春風:大谷廣松(明石屋)
八剣数馬:市川九團次(高嶋屋)
小原万兵衛:片岡市蔵(松島屋)
小野春道:市川齊入(高嶋屋)
八剣玄蕃:市川右團次(高嶋屋)
後見:市村家橘(橘屋)

小野春道の館で、秦秀太郎と八剣数馬が争っているのを腰元巻絹が止めようとしている場面から。九團次さん、登場ここだけだったんですねー。寂しい。粂寺弾正は白塗りですが、ややピンクがかって、海老蔵さんのそのままでも高い鼻がより高く見える隈取りで異国人風。破天荒キャラということで台詞回しも独特ですが、野暮ったい印象を受けなくもない。児太郎君を馬に見立てて調教するシーンやお茶でなく壱太郎君を味わおうとして「ビビビビビ」は笑えますが、R15指定な際どい場面です。おっ、錦の前の腰元の一人に中村芝のぶさん発見!右團次さんの八剣玄蕃、メイクも格好良いし(眉間の模様とか)、男前で理想的な悪役っぷりが良い。最後の粂寺弾正との笑い合戦はなかなか趣あります。黒に赤いラインが入った格好良い小野家の宝刀で最後はあっさり切られちゃいましたが。。。小原万兵衛役の片岡市蔵もいつも通りの楽しさ。水で目元を濡らしたり、ピンチになるとすぐに逃げ出そうとしたり地獄行き確定な小悪党っぷりが素敵。閻魔大王vs小原万兵衛のスピンオフも見てみたい。錦の前の髪が逆立つトリックも単純で分かりやすい勧善懲悪もの。その他驚きや感動は全くありませんでしたが、安定の『毛抜』です。

最後は「お年玉」と題して家族の戯れ『藤娘』藤の精:市川ぼたん、『橋弁慶』武蔵坊弁慶:市川海老蔵、牛若丸:堀越勸玄。

若紫に十返りの 花をあらはす松の藤浪
人目せき笠塗笠しゃんと 振りかたげたる一枝は
紫深き水道の水に 染めてうれしきゆかりの色の
いとしと書いて藤の花 エエ しょんがいな
裾もほらほらしどけなく 鏡山人のしがよりこの身のしがを
かへりみるめの汐なき海に 娘姿の恥かしや
男心の憎いのは ほかの女子に神かけて あはづと三井のかねごとも
堅い誓ひの石山に 身は空蝉の から崎や まつ夜をよそに 比良の雪
とけて逢瀬の あだ妬ましい ようもの瀬田にわしゃ乗せられて
文も堅田のかた便り 心矢橋の かこちごと

松を植ゑよなら 有馬の里へ 植ゑさんせ
いつまでも 変はらぬ契り かいどり褄で よれつもつれつ まだ寝がたらぬ
宵寝枕のまだ寝が足らぬ 藤にまかれて寝とござる
アア何としょうかどしょうかいな わしが小枕お手枕
空も霞の夕照りに 名残惜しむ帰る雁がね

9歳の子供には理解と表現不能な『藤娘』ですが、可愛いければそれで良し。『橋弁慶』も義経の黒子に支えられながらフワッと飛ぶ演出は子供ならでは。ちょっとふらふらしてましたが、ますます凛々しくなった勸玄君でした。

自身の名まで冠した歌舞伎公演なので、なにか新しい試みがあるのかと期待しましたが、それもなく。客席もいまいち盛り上がりに欠けていたと感じるのは気のせいでしょうか。いつも通りの華やかで分かりやすい「初春海老蔵歌舞伎」でした。

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