六月大歌舞伎 第三部『京人形』『日蓮 愛を知る鬼』歌舞伎座

六月大歌舞伎 第三部『京人形』『日蓮』歌舞伎座
「六月大歌舞伎」第三部を拝見しました。まずは『銘作左小刀 京人形』から。

配役
左甚五郎:松本白鸚(高麗屋)
京人形の精:市川染五郎(高麗屋)
奴照平:大谷廣太郎(明石屋)
井筒姫:中村玉太郎(加賀屋)
栗山大蔵:中村錦吾(高麗屋)
女房おとく:市川高麗蔵(高麗屋)

父子でなくて、祖父孫コンビなのが良いです。白鸚さんも、最後の立ち回りは苦しそうですが、思ったより動けてる印象。あのよくわらかない謎だった大工道具は直線を引く時に使うもので「墨壺」っていうのね。染五郎君は初の女形。顔が小さく、スラリと背が高く現代的な美人。昨年十月に拝見した七之助さんの京人形に比べると動きはコミカルな印象が強め。最近清元と常磐津のCDを聞いているので、常磐津はほぼ聞き取れるのですが、長唄は3割くらい不明。基本的に人物の動きを常磐津、京人形の動きや自然、感情表現は長唄でしょうか。奴照平が甚五郎の右腕を切り付けるシーン、本来は切り落とされるということになっていますが、現代の演出では(大)怪我をする程度と考えてよいかも。京人形の滑稽な動き、常磐津と長唄の掛け合い、甚五郎の大工道具を使った立ち回りなど、何度見ても見飽きない、とても楽しい演目です。

二幕目は新作、日蓮聖人降誕八百年記念『日蓮─愛を知る鬼(ひと)─』、上演前にアナウンスがあるのが少し違和感、緞帳に「南無妙法蓮華経」の文字が写され、大仰な音楽、スーパー歌舞伎っぽいのか、ちょっと嫌な予感。脚本演出が横山謙介さんだから当然か。

配役
蓮長後に日蓮:市川猿之助(澤瀉屋)
成弁後に日昭:中村隼人(萬屋)
善日丸:市川右近(高嶋屋)
麒麟坊:市川弘太郎(澤瀉屋)
道善房:市川寿猿(澤瀉屋)
賤女おどろ:市川笑三郎(澤瀉屋)
日蓮母梅菊:市川笑也(澤瀉屋)
日蓮父貫名重忠:市川猿三郎(澤瀉屋)
阿修羅天:市川猿弥(澤瀉屋)
伝教大師最澄:市川門之助(瀧乃屋)

「日蓮という名前」誕生秘話という感じ。スケールのとんでもなく大きな人物なので、連ドラ2クール分の2話分を凝縮した感じでしょうか。急に鬼(阿修羅天、猿弥さんお腹可愛い、雷様の高木ブー赤版に見えて仕方ない)や子供が登場したり、なかなかのとんでも展開。最終的に彼らが何なのか説明がありますが、説明、必要ないのでは。にしても右近君、大きくなりましたね。鎌倉時代には存在しなかった、というかおそらく明治時代あたりに生まれた言葉「情熱」が頻繁に出てくるのはかなりの違和感。全体的に人物描写が浅過ぎて共感ができませんでしたが、おどろ役の笑三郎さんの熱演は素敵。最澄までわざわざ出す必要あったのか疑問ですが、最後は力技で何となくまとまったっぽく、日本の柱、眼目、大船になると言い切る日蓮聖人でした。

そもそも自信満々で自分の意見を押し付けてくるって印象が強い日蓮という人物に苦手意識がありましたが、本演目でも然りで、あんまり楽しめず。日蓮に関する本や映画も見た事がないですし、ひょっとすると食わず嫌いと言えるかもしれませんが、個人的に浄土宗系、そして最澄より空海の方が好感が持てるというのは根本的にあるかも。特に一遍上人が大好きなんですよね。日蓮宗も今度、勉強してみようか。まぁ「よきかな、よきかな」

八月花形歌舞伎の第一部は『加賀見山再岩藤 骨寄せの岩藤』か!猿之助さん、今年出ずっぱり、凄い。来月の『蜘蛛の絲宿直噺』も楽しみにしております!

コメント

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