八月花形歌舞伎 第三部『義賢最期』『伊達競曲輪鞘當』『三社祭』歌舞伎座


歌舞伎座で「八月花形歌舞伎 第三部」を拝見しました。まずは『源平布引滝 義賢最期(よしかたさいご)』から。全五段の『源平布引滝』のうち、『義賢最期』は二段目、最もよく上演される『実盛物語』は三段目です。初めて見る演目でしたが、面白かった!「稚魚の会」を見た後でしたので、やっぱり第一線で活躍する役者は違うな〜と感嘆してしまいました。

配役
木曽先生義賢:松本幸四郎(高麗屋)
九郎助娘小万:中村梅枝(萬屋)
下部折平実は多田蔵人:中村隼人(萬屋)
待宵姫:中村米吉(播磨屋)
太郎吉:小川綜真(播磨屋)
進野次郎:大谷廣太郎(明石屋)
九郎助:松本錦吾(高麗屋)
矢走兵内:片岡亀蔵(松島屋)
葵御前:市川高麗蔵(高麗屋)

2019年の「四月大歌舞伎」、仁左衛門さんの実盛で『実盛物語』を拝見しましたが、記憶薄。幕が開くと高麗蔵さんの葵御前、米吉君の待宵姫の絡みから。かなり年配に見えますが、実際はそうではなく葵御前は将来の木曽義仲を懐妊中。葵御前は後妻、待宵姫は前妻の子供です。桃色の衣装が可憐です。隼人君の折平と付き合っていたのですが、折平が小万との間に子供まで作っていたことを知り愕然。お気持ちお察しします。悲しい。父との別れも悲しいですが、最後は折平と一緒に逃走。米吉君、水も涎も垂れる美男美女のツーショットに今日もありがとう。

やたら強い小万の存在が理解不能なのですが、実は次の段で登場する平家方の瀬尾十郎の娘。義賢はこの事を知っていたのかな〜。義賢と折平の絡みでは、義賢の文箱の封印を、中身見たさに切ってしまうおっちょこちょいの折平、義賢が松を引っこ抜いて石の手水をぶち割ります。説明もないので一瞬意味がわかりませんが、これが平家打倒の気持ちか。平家の家来2人がやってきて、裏切ってない証拠に義賢の兄、源義朝の頭蓋骨を踏めと迫りますが、裏切りとか以前に義兄とはいえ肉親の頭蓋骨踏めるか。えげつないな〜と思っていると、ブチ切れた義賢が頭蓋骨で家来を滅多打ち!武器に使うのはOKなんだと、ちょっと笑ってしまいましたが、歌舞伎らしくて好き。1人は義賢がやっつけるも、もう1人を折平が逃してしまいます。そのお陰で大惨事に。折平っ!めっちゃ男前だけどあんまり良い所ない!

その後の義賢の立ち回りが最高で、襖3枚を使った「戸板倒し」、倒れる前は客席からも「え〜」という心配する声が聞こえていましたが3階席からでも凄い迫力、近くで見たら自分も悲鳴あげてたかも。歌昇君の息子の綜真君も、九郎助の背中に裏返しに固定された状態での立ち回りが可愛い。九郎助の、葵御前は腹に、自分は背中に4人連れみたいな台詞も気が効いている。最後は進野次郎宗政もろとも自分の腹から刀で串刺し、そこからの太夫の語りと合わせた粘りは義太夫狂言っぽくて好き。なかなか死にません。高舞台から平舞台まで階段をうつ伏せに滑り落ちる「仏倒れ」も凄かった。大御所のゆったりした立ち回りもよいですが、やはりスピード感があった方が楽しい。幸四郎さんの舞台は外しませんね。素晴らしかった。文楽でも見たみたい演目です。

二幕目は『伊達競曲輪鞘當(だてくらべくるわのさやあて)』『三社祭』、これは本当に花形役者で。『義賢最期』が良かったので、ぼんやり見てしまいました。

『鞘當』
配役
不破伴左衛門:中村歌昇(播磨屋)
名古屋山三:中村隼人(萬屋)
茶屋女房お新:坂東新悟(大和屋)

『三社祭』
配役
悪玉:市川染五郎(高麗屋)
善玉:市川團子(澤瀉屋)

有名な演目ですが初めて拝見する『鞘當』は2人の関係がなんとなくしかわからないが、吉原の桜が華やかな舞台。隼人君は青が似合いますね。歌昇君は台詞が少し聞き取りにくいが、勢いはある。新悟君の麗しいお声に癒されます。千両役者が演じると深編笠をなかなか取らない2人に客席は悶絶するのでしょうね。『三社祭』はせっかくの男前を化粧で三枚目に、悪玉善玉のお面もフアンには堪らないのかも。顔が小さく足が長過ぎる2人ですが、両方そうなのでバランスは良いかも。日本の踊りは安定感がある方が美しく見えるのは間違いない。今後、所作事も変わってしまった日本人の体型に合わせて変わっていくのかもしれません。来週の第二部も楽しみにしております。

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