6月特別公演 能『土蜘蛛』/狂言『呼声』国立能楽堂

6月特別公演 能『土蜘蛛』/狂言『呼声』国立能楽堂
国立能楽堂で以前からずっと拝見してみたかった『土蜘蛛』、昨年3月に日本博皇居外苑で開催された特別公演「祈りのかたち」、荒天のため中止になってしまった2日目の演目を中心に構成されているだけに、出演者が凄い!

配役
6月特別公演 能『土蜘蛛』/狂言『呼声』国立能楽堂

一調「曙(あけぼの)金春安明・大倉源次郎 」
脇仕舞「羅生門(らしょうもん)宝生欣哉(下掛宝生流)」
舞囃子「東北(とうぼく)金剛永謹(金剛流)」

狂言「呼声(よびこえ)山本東次郎(大蔵流)」
主人に無断で外出した太郎冠者を呼びにいく次郎冠者と主人、というシンプルな話。ですが、シンプルに面白くて爆笑の連続。次郎役の山本則俊さんが強面なのがまた良い。最初は普通に呼び出すものの居留守を使う太郎冠者、次に次郎冠者が平家節で、さらに主が小唄節で、最後は次郎冠者が踊り節で呼び出すが居留守を使い続ける太郎。しかし、3人とも踊るのがだんだん楽しくなってくるのですが、年配の役者の方々が本当に楽しそうに足踏みしているのを見ていると微笑ましい。

能「土蜘蛛(つちぐも)入違之伝・白頭・眷属出之伝・ササガニ 観世銕之丞・実改メ梅若桜雪(観世流)」
小書き「入違之伝」により前シテが退場する際、橋掛りで独武者とすれ違った後、振り返り、蜘蛛の糸を射出。「眷属出之伝」は今回初めての演出で、土蜘蛛に2人の眷属(赤頭)が加わる。さらに「ササガニ」は、間狂言に蟹の精2匹が登場。

上演時間も60分程度と短く、お能としては抜群の分かりやすさ。上手に頼光の臥所の一畳台、その上に枕替わりの鬘桶、前半は頼光役の観世清和さんの気品が堪りません。薬を持ってくる侍女の胡蝶の存在の意味がよくわかりませんが、華やかさが加わるのと、頼光の気弱さが際立つのか。前シテの観世銕之丞さんも良くて、恨みを秘めた僧役にニンがぴったり。僧の状態で何度か蜘蛛の糸を繰り出すのですが、糸の数と勢いがなかなか凄くて、客席まで届く糸も。歌舞伎だと後見がすぐに糸を回収するのですが、それがないので、舞台は糸だらけに。演者は糸を振り払う動作は皆無、お囃子さえも動作は極小で、その状況も面白い。しかも摺り足なので、頼光の足元に糸が溜まりえらいことに。それにしても僧に膝丸で反撃する頼光の凛々しさったらありません。清和さん、素敵過ぎる。

間狂言の蟹さんが可愛い。ササガニを「ささやかな蟹」、つまり自分のことだと勘違いしビビる蟹が特に愛らしい。後半、深手を負って葛城山に逃げた土蜘蛛を追う独武者一行、舞台中央に土蜘蛛の住処の塚が設置されますが、眷属含む3人が入っているため巨大で禍々しい雰囲気。独武者が塚を切り崩し、土蜘蛛が出現してからは糸を大放出、舞台も狭いので迫力満点で非常に楽しい。眷属を加えたのは想像通り、梅若桜雪さんが動けないからか。投げる糸も弱々しくて、本当心配。こんな状態で出演しなくても!と思うのですが、一般人には分からない思いがあるのでしょう。また無眷属バージョンも拝見してみたい。

面は後シテは「黒癋見(徳若作)」、ツレ(土蜘蛛の眷属)は「泥顰(でいじかみ/満茂作)」「小獅子」、ツレ(誇張)は「孫次郎」でした。

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